恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
『一番線、電車が参ります。白線の内側までお下がりください』
電車が来るアナウスに、景臣先輩が「あ」と声を発した。
おそらく、彼の乗る電車なのだろう。
それがわかった私は景臣先輩の胸をそっと押して、1歩下がる。
それに動揺している様子の彼を真っすぐに見つめた。
「景臣先輩」
──行かないで。
そんな心の声が私の決意を邪魔しようとする。
「清奈……」
「っ、私……」
──離れたくない、ずっと一緒にいたい。
そんな言葉ばかりが、口をついてしまいそうになる。
ちゃんと、笑顔で送り出さなきゃいけないのに、言葉を紡ごうとすると、「私っ、わた……」と喉に詰まる。
大粒の涙が溢れて視界が歪んでしまい、情けなくて俯く。
景臣先輩が心配しないように、もっと強い私でいなきゃいけないのに……。
やっぱり、景臣先輩がいなくなってしまうのは寂しい。
「清奈」
景臣先輩が、ふと私の名を呼ぶ。
凛とした声色が人のざわめき、風の音の中でも澄んで私の耳に届いた。