恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「清奈……行ってきます!」
景臣先輩の笑顔を目に焼き付ける。
離れていく彼の温もりに胸が締め付けられたけれど、降りていく人波に逆らって電車に乗る景臣先輩の姿をちゃんと目で追った。
扉が閉まる瞬間まで、景臣先輩は私に手を振ってくれていた。
走り出す電車の窓から、彼は口パクで私に何かを言う。
それは声にはなっていないはずなのに、ちゃんと彼の低くも穏やかな声色で『愛してる』と聞こえた気がした。
そして遠ざかる電車を見送り、しばらくそこから動けなかった私は、吹き抜ける風が彼に続いていると信じて返事をする。
「景臣先輩……私も愛しています」
風がさらう髪をそっと押さえて、旅立った君を想う。
でもこれはお別れではないから、君と出会うために私は歩きだそう。
後ろ髪を引かれながら、私は仲間の元へと静かに一歩を踏み出す。
君へと向かう、未来へ向かって。