恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
エピローグ
あの後、私達は盛大に教頭先生に怒られた。
駅員にもかなり迷惑をかけていたので、学校に連絡が行ってしまったのだ。
でも、あの時の事は後悔していない。
景臣先輩に会えなかったら、私達はずっと後悔する事になっていたから。
あの瞬間は誰が何と言おうと、私達にとって必要な選択であり、大切な時間だった。
──そして、あれから早くも一年。
私と紫ちゃんは高校2年生になり、業吉先輩は3年生になって、この古典研究部の部長になった。
小町先生は卒業した朝霧先輩とようやく結ばれて、手を繋いで堂々と町中を歩けると幸せそうに話していた。
そして私は学校に行く前の朝、ある決断をして最大の宿敵と向き合っている。
「ふたりともそこに座って、私の話を聞いてほしいの」
昨日学校で配られた進路希望調査票を手に私はダイニングテーブルの椅子座り、両親を呼んだ。
「あのね、私……医者にはなりません」
「清奈、あなた何言って……」
「私、古典の教師になりたいの」
そう、私は古典の教師になる事を決めた。
私と景臣先輩を繋ぎ、仲間という居場所をくれた古典。
小町先生の勧めもあって、私は古典文学が学べる大学に行こうと考えている。
案の定、お父さんは「馬鹿を言うな!」と逆上をする。
けれど私は怯む事なく、「でも、私の夢なの!」と言い返した。
馬鹿だと思われようと、私が胸を張って歩きたいと思える道がこれだった。
誰かのレールの上じゃない。
私はこれから、自分自身で作るレールの上を歩んでいくと決めたから。
両親に聞いてもらう事は、その覚悟を示すためでもあった。