恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「うっせ、これが俺のトレードマークなんだよ」
自分の金髪を指さして怒る業吉先輩は私服だからか、少しだけ大人びて見える。
私も、そう見えていたらいいな。少しでも、あの人に近づけるように。
「確かに、業吉先輩の黒髪は不気味だもんね」
「おい紫、それはどういう事だ?」
紫ちゃんは天然で毒を吐く。
本人にもちろん、悪気はない。
ニコニコとしている彼女を相手に、私と業吉先輩は顔を見合わせるとこっそりため息をついた。
「そうだ清奈、俺達はここで待ってるから、先に部室行けよ。──待ってるぞ、あの人」
あの人が……待ってる。
業吉先輩は私とふたりで会う時間を作ってくれたんだ。
2年もの時が流れている。
私は高校3年生の夏にこの大学を受験する事だけを伝えたっきり、連絡を一切とっていない。
向こうからも、返信ははなかった。
たぶん私もあの人も一度声を聞けば、全てを投げ出してでも会いたくなってしまう事がわかっていたからだろう。
だから約束の日──卒業したら会いに行くという大雑把で確証のない再会を信じて、連絡はとらなかったのだと思う。