恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「っ……迷惑、でしたか?」
──私の気持ちは迷惑でしたか?
あの日から、2年も経ってる。
新しい出会いがあり、私の知らない時間を刻む先輩に高校で好きな人が出来ていたとしてもおかしくはない。
それにあの和歌だって、はっきり告白だと言われたわけじゃない。
きっと、私の勘違いだったんだ。
「清奈、俺は……」
「な、なんて……私、少しは和歌に詳しくなったでしょう?」
震える声を張り、おどけてみせた。
そんな私を雅臣先輩は目を瞬かせて、口を半開きにしたまま凝視する。
「え?」
呆けるような声を発した雅臣先輩の顔は、年下の私が言うのは失礼だとは思うけれど、マヌケ面だった。
真剣な空気が漂う中で、私の変わりようは雅臣先輩を大層驚かせたみたいだ。
「もう、からっきし駄目だなんて言わせませんから!」
泣きたい気持ちを隠すように、笑顔の仮面をかぶる。
だって、君は私のことを好きでいてくれてると思ってたんだ。
でも、今の切なそうな、戸惑ったような顔を見せられたら、勘違いだったんだって嫌でも気づく。
途端に雅臣先輩の答えを聞くのが怖くなって、私は告白をなかったことにしようと誤魔化した。
それをどうか、君に気づかれませんようにと心の中で願う。
「……あ、あぁ、まさか清奈に会えるとは思わなかったぞ」
「ははっ、驚かせたかったんですよ」
私も雅臣先輩も、笑顔がぎこちなかった。
会えて嬉しいのに、会ったら心臓が張り裂けそうなほどに痛む。
君に燃えるような恋をしていたと言われて、この2年間恋しい気持ちがどんどんつもった。
けれど、今この瞬間──。
──私は、初恋に破れたのだ。