恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「入部してくれるのか? 生憎、部員は俺だけだがな」
「またですか!」
「この学校の生徒は、古典の良さがわからない連中ばかりらしい」
「そうですねぇ、私も雅臣先輩に出会うまでは古典なんて興味ありませんでしたし……」
なにごとも、好きになるきっかけがそこになければ、本当は身近にある宝石に気づけない。
古典は授業でもやっていたから身近にあった。
けれど、授業だから触れていただけ。
それ以上でも以下でもない存在だった。
だから雅臣先輩に出会わなければ、私は和歌の美しい表現、言葉のひとつひとつに込められた深い想いの奥ゆかしさを知らずに一生を終えていたことだろう。
「だから、和歌の良さをこれから伝えていきましょう」
私が君を好きになって、和歌が好きになったように。
今なら、雅臣先輩の和歌への想いを理解できるから。
そしていつか、この場所が誰かにとっての居場所になればいい。
私にとってもそうだったように、彼とそんな場所を作りたいと思った。