恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「はい……見ました。【くそくらえ!】ってやつですよね……」
私は促されるままに、正直に答える。
するとわずかに、在田先輩の表情が和らいだ気がした。
「……どう思った」
「え……?」
「これ見て、お前はどう思ったんだよ」
在田先輩は、進路希望調査票を軽く持ち上げる。
これを見てどう思ったかなんて……。
私と同じなんじゃないかって思ったよ。
このひと言から感じるのは、もどかしさだった。
自分が望むモノになれないもどかしさ、私にしか出来ないことを見つけたいのに見つけられないもどかしさ。
私ならそんな気持ちで、【くそくらえ!】って書くと思う。
でも、一緒にすんなって言われちゃうかな。
でも、私は自分の想いを書けるだけうらやましいと思う。
私には反抗する道すら、用意されていないから。
「……いいなって、思いました」
「は?」
案の定、「お前なに言ってんの?」みたいな顔で睨まれる。
けれど、これが私の本心だ。
期待される重圧から解放されたいと思いながら、私はそこに留まることを選んでいる。
だって家族から見放されたら、私の居場所はどこにもなくなってしまう。
帰える場所を失う、それは怖いことだ。