恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「雅臣先輩が古典の魅力を教えてくれるんでしょう?」
「……まいったな、清奈には予知能力があるのか」
驚きに見開かれた雅臣先輩の目に、私は目をぱちくりさせて首をかしげる。
おかしいな、雅臣先輩が私に言ってくれた言葉なのに……。
雅臣先輩なら「そうだな」って、笑うかと思っていた。
けれど、もしかしてあの時の会話を覚えてないの?
忘れてしまっていたのだとしたら、ひどい話だ。私は雅臣先輩が好きで、どんな言葉も覚えているというのに。
「もう、雅臣先輩のバカ……」
「清奈、なにか言ったか?」
顔をのぞき込んでくる雅臣先輩を私は半目で見て、頬を膨らませる。
「いーえ! なんもありませんよ!」
フイッと顔をそらせば、雅臣先輩は目を点にして戸惑うように頭をポリポリと掻いていた。
──ちょっと寂しかっただけです。
雅臣先輩にとっては、そんなに大事な思い出じゃなかったのかなって思っただけです。
私は年甲斐もなく、ふてくされてしまう。