恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「あ、ありがとうございます。こんなところで会えるなんて、偶然ですね」
朝から雅臣先輩に会えるなんて、嬉しいな。
なんだか心地のいい陽だまりを見つけたみたいで、ほっとする。
私がお礼を言うと、雅臣先輩は一瞬不思議そうな顔をした。視線を宙に泳がせて、悩む素振りを見せる。
「ん……? 偶然というか、まぁそうだな」
どこか煮えきらない言い方は腑に落ちないが、私は気のせいだと話を続ける。
「いつも、この時間に乗ってました?」
「いや、いつもは自転車なんだ。ほら、午後から雨が降るって天気予報で言ってたから」
あぁ、だから電車……って。
雅臣先輩は私と同じ駅か、その前から乗っていたはず。
そこから自転車で高校まで通うって、いくらなんでも無理じゃないだろうか。
なんたって、3駅分あるのだ。普段、朝の何時に家出てるのって話になる。
そこまでして、自転車で来る意味ってなんなのだろう。ますます、雅臣先輩って、わけがわからない。
「学校まで3駅も乗るのに、朝から体力有り余ってるんですね」
「え、3駅? 俺は次の駅で降りるよ」
「……はい?」
どうしてだろう。隣で降りて、そこからどうやって学校に行くつもり?
不思議に思っていると、『次は~○○駅~』とアナウスが入る。
「ごめんな、俺ここで降りるけど……」
「え、雅臣先輩!?」
「え、なん──」
何かを言いかけた雅臣先輩は駅に到着した途端、降りようとする大勢の乗客によって押し流されてしまう。