恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
──2年後、春。
「清奈、お前は今日から高校生になる。大学受験に向けて無駄な時間を過ごすことがないようにするんだぞ」
朝、リビングに入って第一声がそれだった。
新聞を手にコーヒーを飲んでいるお父さんが、こちらを一切見ずに教師じみた小言をたれる。
私はドアノブに手をかけたまま、心が冷めていくのを感じていた。
この人たちは、どうしてこうなんだろう。
最初は「おはよう」でしょう?
家族らしい会話もできないのかと、胸の中で皮肉をこぼしながら、私は「はい」と短く答える。
「あなたがどうしてもって言うから、高校は選ばせてあげたけど、大学はお父さんの言ったところへ行きなさいよ?」
「……はい」
私はうんざりしながら、お母さんに頷く。
お母さんの言う通り、私は高校を選ばせてもらった。
両親は他に行かせたい高校があったみたいなのだが、私がどうしても行きたい高校があると言ってお願いしたのだ。
今思えば、両親に逆らったのはあれが初めてだったと思う。
そこまでしても、行きたい高校だったのだ。