恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「そんなの……」
震える声でぽつりと呟いた私を、物部さんは不思議そうな顔で「え?」と聞き返す。
彼女の涙が、私にも移ったのかもしれない。
胸がいっぱいで、潤んでしまった目を見られまいと俯いた。
「……いつだって、何度だって言うよ」
ゆっくりと顔を上げて、彼女の澄んだ瞳を見つめ返す。
私の泣きそうな顔を見たからか、物部さんがハッと息を呑むのがわかった。
自分でもどうしてこんなに、熱くなるのかがわからない。
けれど、胸の奥底から突き上げてくる想いに、私は物部さんの肩を掴んで声を上げた。
「物部さんの夢はすごい、私が応援するから!」
「小泉さん……ありが、とう……。私も頑張って、成功して、みんなを見返すから。応援してくれた小泉さんのためにも」
あぁ、わかった。
私は彼女に、自分の夢にもっと誇りを持って欲しかったんだ。
私にはない宝物を持っているのに、それを周りの人に潰されるなんてもったいないから。
だから、こんなに必死になっているんだ。
描いた未来の尊さを、私は知っているから。
「物部さん、小泉さんじゃなくて、清奈って呼んでくれないかな?」
「え?」
「私たち、もう友達でしょう? 紫ちゃん」
「あ……うん、うん! 清奈ちゃん!」
紫ちゃんは噛み締めるように何度も頷いて、最後は満面の笑みで名前を呼んでくれた。
誰とでも当たり障りなく接していれば、日常生活では困らないから、友達なんていらないと思っていた。
雅臣先輩だけが特別だったのに、今は業吉先輩に紫ちゃんが現れて、上っ面の繋がりだけでは嫌だと思える人たちがまた増えた。
その度に自分の世界が広がっていくようで、視界はさらにクリアになって色鮮やかに見えるんだ。