恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。

「カッコいいな、清奈は」

「え？」


雨が降る帰り道。傘がぶつからないように、少し距離を置いて隣を歩く雅臣先輩がふいにそう言った。

雅臣先輩は部活が終わるといつも、部室のカギを返しに行くからと私たちを先に帰らせる。

今日は雅臣先輩が電車で帰る事を知っていたので、私が一緒に帰ろうと誘ったのだ。


「紫の事、クラスのみんなの前で助けたんだろう？」


傘を少しだけ傾けて、雅臣先輩は柔らかな眼差しを向けてくる。

その視線がなんだかくすぐったくて、私は目を伏せた。


「助けたってほどじゃ……」


紫ちゃんがクラスであった事を雅臣先輩と業吉先輩に話したのだが、私をかなり美化して語るものだから、しばらく尊敬の眼差しで褒められ倒された。

その時の事を思い出して、私はどっと疲労感を感じる。