未来


「……さっき、中学の友達に会ったの。
私と仲の良かった後輩ちゃんが自殺未遂したこと、とか


…私のせいだって…言われちゃった」

未来は笑う
精一杯
拳を強く握って
歯を食いしばって
負けないように笑う

「…仕事で、付き合い悪くなって、元々は仲の良かった友達なんだけど。
ケンカ、しちゃって
仲直りできないまま時間だけが過ぎていって。
久しぶりに会ったら、これだもんなぁ」

俺は堪えきれずに言葉をこぼした

「笑うなよ」

「え…?」

「そんな辛そうに笑うなよ」

俺は強く未来の手首を掴んで自分の方に引っ張った

思ったよりも華奢な体がすっぽりと俺の腕の中に収まる

「は、はるかく…」

未来の顔を隠すように抱きしめる

泣け
笑うな

「はるか…くん。私は大丈夫だから」

そう言って逃れようとする体に力を入れて逃がさない

「大丈夫…だから」

大丈夫と言う未来の声が徐々に小さくなる

俺はなにも言わずただその腕に力を込めた

「だいじょう…ぶ」
まるで自分に言い聞かせるような言葉

もういいんだよ
耐えなくて

大丈夫じゃなくたっていいんだ

「だい…っ…う…ぇぇぇぇん」

涙をボロボロとこぼすお前を俺は強く強く抱きしめて離さない
俺が守るから
ひとりじゃない
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