君の未来に、僕はいない
「あお君のお母さんのお母さんはな、お告げ人で有名な人で、あお君のお母さんもその能力を継ぐことをかなり期待されとったんよ」
祖母もこの能力を持っていた……?
そんなこと、誰からも聞いたことがなかった。
「でも、あお君のお母さんはその能力受け継がなくてね。周りの心無い人から、凡人とか、期待外れとか、相当言われてたんよ」
そんな過去があったなんて全く想像がつかない。
しかし、確かにその話と合点がいくところがひとつだけあった。
母はおばあちゃん世代の人の前では、なぜか静かだったのだ
「だからかね、特別とか、天才とか才能とか、そういう言葉のくくりへの執着が、すごいのは。あお君もきっと、相当言われてきただろうけど」
その言葉に、俺は俯き黙った。
そうだ。そんな過去があったからとはいえ、そんな夢や期待を子供に押し付けるなんて間違っているし迷惑だ。
俺はあの女ともうこの先極力関わりたくないし、関わるつもりもない。
「でもももう、こっちに戻ってきたからには、のびのび過ごしてほしいんよ。学校も行きたくなかったら行かなくていいし、行きたくなったら行けばええ」
こんなに優しい言葉をかけてもらえると思っていなかった俺は、思わず少し泣きそうになってしまった。
のびのび過ごしていいなんて言われたのは、生まれて初めてだった。
なんて言葉を返したらいいのか分からず俯いている俺を見て、おばあちゃんは唇に人差し指を当ててこう言った。
「もうちゃんには、この話は秘密にしようね。ばあちゃんが知らんふりしている方が上手くいくことってあると思うけん」
その言葉に、俺は深く頷いた。
「今日から、あお君のばあちゃんとして頑張るけん。よろしくね、あお君」
あの時のおばあちゃんの言葉を、俺は今でもはっきりと覚えている。
あの言葉があったから、俺はこの町で自分らしく暮らせたのだ。
萌音が顧み人だと知ったのは、萌音と一緒にこの町に帰ってきてからのことだった。
萌音自身も最近そのことを知ったのだと言っており、そのことにも俺は驚いた。
顧み人、という言葉は確かに聞いたことがあったが、まさか萌音自身がそんな力を持っていたとは。
過去をみること、未来を見ること、一体どっちが自分のためになるのだろうか。
それは全く分からないけれど。
「ばあちゃん、また入院することになったけん」