イジワル部長と仮りそめ恋人契約
「びっくりした! 大丈夫ですか?!」
「……あんた、なんでそんな素直なんだよ……」
「え?」
咳がおさまったところで苦々しげにつぶやかれ、思わず首をかしげた。
素直? まあたしかに、人からそう評価されることはよくあるかもしれない。
……だけど。
「でも、悠悟さん。私ひとつ、悠悟さんに隠していることがあるんですよ」
「は? なんだ、それ」
怪訝な表情で訊ねる彼に、私は人差し指をくちびるにあててにっこり笑ってみせた。
「内緒です。悠悟さん、絶対怒るから」
「あ、そう……」
ジト目で見られるけど、気にしない。たぶんこれは、彼には伝えない方がいいことだから。
それなら、チラッとでも『隠していることがある』なんて口にするべきじゃないんだろうけど……でもちょっとくらい、私も悠悟さんに意地悪言ってみたかったの。これくらいなら、いいよね?
「あーくそ、なんなんだ」
笑顔の私から視線を逸らし、悠悟さんはチッと舌打ちした。
突然の彼の行動にきょとんとする私が見上げる先で、首の後ろに片手をやりながらため息を吐く。
「あんたといると、調子狂う」
「……それ、褒め言葉です?」
「褒めてはない。まあ、貶してるつもりもねぇけど」
そうして話は終わったとばかりに、悠悟さんはさっさと歩き出してしまう。
……なんか、よくわからないことを言われてしまった。
というか、全体的に悠悟さんはよくわからないことだらけだ。初めて話しかけたあのとき、すごく感じのいいさわやかな人だと思ったら実はそうでもなかったし、かと思えば私の勝手な事情に協力してくれたりするし。
……たまに、ドキッとするようなこと言ってくるし。私の方こそ、調子狂っちゃうよ。
けれどまあ、そういえば会うのは今日でまだ2回目。お互いよくわからないことがあるのは、仕方ないことだよね。
約束の1ヶ月の間、私はどれだけ、悠悟さんのことを知ることができるんだろう。悠悟さんに、私のことを知ってもらえるだろう。
でも、とりあえず……さっきのため息をつく彼の様子は、なんとなくかわいかったかも。
私は思わずふふっと笑みをこぼし、その背中を追いかけたのだった。
「……あんた、なんでそんな素直なんだよ……」
「え?」
咳がおさまったところで苦々しげにつぶやかれ、思わず首をかしげた。
素直? まあたしかに、人からそう評価されることはよくあるかもしれない。
……だけど。
「でも、悠悟さん。私ひとつ、悠悟さんに隠していることがあるんですよ」
「は? なんだ、それ」
怪訝な表情で訊ねる彼に、私は人差し指をくちびるにあててにっこり笑ってみせた。
「内緒です。悠悟さん、絶対怒るから」
「あ、そう……」
ジト目で見られるけど、気にしない。たぶんこれは、彼には伝えない方がいいことだから。
それなら、チラッとでも『隠していることがある』なんて口にするべきじゃないんだろうけど……でもちょっとくらい、私も悠悟さんに意地悪言ってみたかったの。これくらいなら、いいよね?
「あーくそ、なんなんだ」
笑顔の私から視線を逸らし、悠悟さんはチッと舌打ちした。
突然の彼の行動にきょとんとする私が見上げる先で、首の後ろに片手をやりながらため息を吐く。
「あんたといると、調子狂う」
「……それ、褒め言葉です?」
「褒めてはない。まあ、貶してるつもりもねぇけど」
そうして話は終わったとばかりに、悠悟さんはさっさと歩き出してしまう。
……なんか、よくわからないことを言われてしまった。
というか、全体的に悠悟さんはよくわからないことだらけだ。初めて話しかけたあのとき、すごく感じのいいさわやかな人だと思ったら実はそうでもなかったし、かと思えば私の勝手な事情に協力してくれたりするし。
……たまに、ドキッとするようなこと言ってくるし。私の方こそ、調子狂っちゃうよ。
けれどまあ、そういえば会うのは今日でまだ2回目。お互いよくわからないことがあるのは、仕方ないことだよね。
約束の1ヶ月の間、私はどれだけ、悠悟さんのことを知ることができるんだろう。悠悟さんに、私のことを知ってもらえるだろう。
でも、とりあえず……さっきのため息をつく彼の様子は、なんとなくかわいかったかも。
私は思わずふふっと笑みをこぼし、その背中を追いかけたのだった。