イジワル部長と仮りそめ恋人契約
というかあの、肩のストラップいじるの、いい加減やめて欲しいんですけど……。

冷蔵庫にあてた手のひらに、知らず知らず力がこもった。



「あと今まで俺、髪型おだんごにしてる女子って食指動かされなかったけど。これも意外とイイな」

「へ?」

「このへん、全体的に無防備な感じが」



言いながら、私の剥き出しになったうなじから肩にかけてをつうっと悠悟さんの指が滑る。



「っあ」



思わず背を反らし、ほとんど反射的に小さく情けない声が漏れた。その瞬間、パッと口もとを手のひらで覆う。

うわ、なに今の、恥ずかしい。

なんだか甘えたような響きを含んだその声に、自分でも驚いた。背後でイタズラにうごめいていた悠悟さんの手も、ピタリと動きを止める。

今がチャンスだ。私は素早く振り返り、両手で彼の胸板を押した。



「もう悠悟さんっ、邪魔しないで大人しく向こう行っててくださいー!」



言いながら、ぐいぐい悠悟さんの身体を自分から離そうとする。

意外と簡単に、彼はされるがままだ。



「……あー。はいはい」



ぼそりとつぶやきながら、最終的には自分の足でソファーの方へと戻っていく。

その後ろ姿を眺めつつ、ひそかに息を漏らして両頬を手のひらで覆った。

……熱い。悠悟さんはただ単に私をからかってるつもりなんだろうけど、こっちは免疫がないんだから勘弁して欲しい。

最後にこっそり恨みがましい視線を送ってから、私はようやくカウンターの上のエプロンを手に取った。
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