イジワル部長と仮りそめ恋人契約
炊飯器から、お米が炊けた合図の短いメロディーが流れる。

そのタイミングでオーブンを確認すれば、中に入れていたものもいい感じ。

満足げにひとつうなずいて、私は悠悟さんのいるダイニングを振り返った。



「悠悟さんできましたよー」

「おー」



声をかけると、ソファーにもたれてスマホをいじっていて彼がこちらへやって来た。

どうやら、テーブルに運ぶのを手伝ってくれるつもりらしい。カウンターの上に並ぶ手料理の数々を見て、なぜか悠悟さんは吹き出した。



「ちょ、おまえ……節操さなすぎだろ、このメニュー」



……まあたしかに、そうかもしれない。

今回私が作った彼いわく節操のないメニューとは、まず「何か食べたいものありますか?」との質問に「じゃ、グラタン」と若干適当っぽく答えた悠悟さんのリクエスト通り、オーブンから出したてのあつあつのシーフードグラタン。

それから究極に自分好みな配合を見つけ出したこだわりの餃子に、粗挽き胡椒をきかせたポテトサラダ。

そして二度揚げがポイントのジューシーから揚げと、定番のしじみのお味噌汁だ。これに、炊きたてごはんもプラスされる。

このラインナップじゃ、和洋中ごちゃまぜで全然まとまりがないよね。わかってはいるけど、私はついくちびるを尖らせる。



「そう言われるのはもっともなんですけどー……一応全部、私の得意料理なんですよ!」

「ははっ、いやでも、うん。狙ってなさすぎて、逆に好感持てるわ」



そう言った悠悟さんの笑顔は、なんだかいつもより無邪気に見えた。彼は料理の載った皿を、ソファーの前にあるローテーブルへと持って行ってくれる。

私も慌てて、同じく料理や食器を運び始めた。
< 47 / 85 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop