イジワル部長と仮りそめ恋人契約
「じゃじゃーん。食後のデザートは、手作りカスタードプリンなのですよ~」



冷蔵庫から出したプリンふたつとスプーンをおぼんに載せて、私はテーブルの傍らに膝をつけた。

悠悟さんが持って来てくれたシャンパンと、それから後から空けたワインも素敵においしかったので、今の私はずいぶん楽しい気分になっている。

はなうた混じりに悠悟さんの前にプリンとスプーンを置くと、アルコールを摂取してもまったく普段と変わらない彼もまた「ははっ」と笑みをこぼした。



「マジかよ、デザートもあるのかよ。抜かりないな」



あれだけあった料理は悠悟さんと私ふたりで平らげてしまい、彼の手伝いもあって食器類も洗い終わった。

悠悟さんの言葉を聞き、私はわざとらしく腰に手をあてて胸を張ってみせる。



「ふふん。唯一の特技ですからね!」

「それ、胸張って言うことか?」

「いいんですよ! どうぞ、召し上がれ!」



言いながら、その手に無理やりスプーンを握らせた。

きっとシラフの状態だったら、悠悟さん相手にそんな強引なことはできなかったかもしれない。けれどいかんせん、このときの私は多少酔っていたのだ。

彼本人もなんだかおもしろそうにしているので、まあ、よしとする。



「お、美味いな」

「そうでしょ? おいしいでしょ?」

「はは。なんだよおまえ、最初グラタン食べたときのしおらしさはどこ行ったんだよ」

「だって今日作ったものの中だと、そのプリンが1番自信あるんですもんー」
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