イジワル部長と仮りそめ恋人契約
何を隠そう、このなめらかカスタードプリンは千楓お兄ちゃんも私の手料理の中では1番好きらしいのだ。
味にうるさいあの人が気に入ってくれているというだけで、だいぶ自信にはなる。
私自身もプリンを食べながら、いつもより積極的に悠悟さんに話しかけた。
「バニラビーンズを使うのがね、こだわりなんですよー。あとカラメルをあえてちょっとだけ焦がすと、大人の味になるんです!」
「へー。志桜ちゃんはすごいなー」
「びっくりするほど棒読みですね!」
彼の対応に納得がいかない酔っ払いな私は、つい頬をふくらませる。
悠悟さんは気分を害した様子もなく「はいはい」と笑い混じりに応えると、不意にその右手を私の頭の上へ乗せてきた。
「よしよし。おいしい料理が作れてえらいな」
悠悟さんの手が、そっと頭のてっぺんを撫でる。
ふざけているんだろうけど、正面から私を見つめる瞳はどこまでもやさしくて。
その目を見つめ返したまま、動けなくなってしまった。
……頭、撫でられてる。髪に、悠悟さんの手が触れてる。
それだけで、体温が上昇した。
「……まあ、そりゃ、これだけできれば送り出すにも問題ないよな」
不意に彼がつぶやいたから、私は「え、」と小さくもらす。
やわらかく笑ったまま、悠悟さんは続けた。
「きっとおまえ、いいお嫁さんになれるよ」
「──、」
それを言われた瞬間、アルコールで高揚していた気分が冷水を浴びせられたように急激に冷えていくのを感じた。
いいお嫁さんになれる、なんて。本当なら、ヒトに言われたらうれしいセリフなんだと思う。
だけど私は、悠悟さんにそれを言われたくなかった。言われて、自分でも驚くほどに悲しくなってしまった。
味にうるさいあの人が気に入ってくれているというだけで、だいぶ自信にはなる。
私自身もプリンを食べながら、いつもより積極的に悠悟さんに話しかけた。
「バニラビーンズを使うのがね、こだわりなんですよー。あとカラメルをあえてちょっとだけ焦がすと、大人の味になるんです!」
「へー。志桜ちゃんはすごいなー」
「びっくりするほど棒読みですね!」
彼の対応に納得がいかない酔っ払いな私は、つい頬をふくらませる。
悠悟さんは気分を害した様子もなく「はいはい」と笑い混じりに応えると、不意にその右手を私の頭の上へ乗せてきた。
「よしよし。おいしい料理が作れてえらいな」
悠悟さんの手が、そっと頭のてっぺんを撫でる。
ふざけているんだろうけど、正面から私を見つめる瞳はどこまでもやさしくて。
その目を見つめ返したまま、動けなくなってしまった。
……頭、撫でられてる。髪に、悠悟さんの手が触れてる。
それだけで、体温が上昇した。
「……まあ、そりゃ、これだけできれば送り出すにも問題ないよな」
不意に彼がつぶやいたから、私は「え、」と小さくもらす。
やわらかく笑ったまま、悠悟さんは続けた。
「きっとおまえ、いいお嫁さんになれるよ」
「──、」
それを言われた瞬間、アルコールで高揚していた気分が冷水を浴びせられたように急激に冷えていくのを感じた。
いいお嫁さんになれる、なんて。本当なら、ヒトに言われたらうれしいセリフなんだと思う。
だけど私は、悠悟さんにそれを言われたくなかった。言われて、自分でも驚くほどに悲しくなってしまった。