イジワル部長と仮りそめ恋人契約
そんなことを考えもじもじうつむいていたら、ふっと頭上から笑みをこぼす気配がした。

顔を上げると、そこには私を見下ろしてはにかむ悠悟さんがいる。



「そっか。……なんだ」



ドキッと心臓をはねさせたのも束の間、そのまま力強く抱きしめられた。



「俺はとっくに、志桜を自分のものにしてよかったのか」

「っゆ、悠悟さん」



耳もとでささやかれ、頬が熱くなる。

少しだけ顔を離した彼は、私とひたいを合わせてとろけるような笑顔を見せた。



「志桜がすきだ。ずっと俺と一緒にいて」



こちらが何か答える前に、くちびるを塞がれた。これじゃあ、前に私の家でしたときと一緒じゃないか。

だけどそれが、全然嫌じゃないから困ったものだ。キスの応え方なんてわからないけど、悠悟さんの胸もとにすがりついて必死でついていこうとする。

こないだと違うのは、あたりまえのように私のくちびるを割って彼の舌が入りこんできたこと。口内をなぞって、深くまで侵食されて、舌を絡めとられて。痺れるその感覚に、なんだかもう頭がおかしくなってしまいそう。



「もともと、ミスミ電機との商談の後は直帰の予定だったんだ。このままここに泊まっても、何ら問題ないな」



緩めていたネクタイを完全に抜き取り、獣の目をした悠悟さんが自分のくちびるをぺろりと舐めた。

ああ、なんていやらしい。だけど彼に言わせれば、いつの間にかベッドに押し倒されていた息も絶え絶えな今の私も相当いやらしい顔をしているらしい。

それってどんな? なんて訊ねる前に、またキスが降ってきた。嫌なわけじゃないんだけど無意識に後退していたらしく、気づいたらベッドの真ん中あたりにいる。

これってもう、なんというか、完全に悠悟さんのスイッチ入ってる感じ?
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