好きの海に溺れそう
話しながら、だんだん自分の顔が赤くなるのを感じる。




着替えを見たこと自体は何も感じないけど、「着替えを最近見てない」って…。




何言ってんの俺…。




「あんた本当にピュアだね…。で?何か用事あったんじゃないの?」




Tシャツを着て薄いパーカーを羽織りながら俺に言う杏光。




そうだった…。




思わずうつむいて黙ってしまう。




「何…」




スカートを脱いでスウェットを履いた杏光は、ベッドに座って俺の言葉を待ってる。




「…隣、いい?」

「どうぞ」




杏光の隣に座った。でもまた黙ってしまう俺…。




そんな俺を察したのか、杏光が優しい口調で話してくれる。




「恋のこと…でしょ?」




まさに言い当てられて、俺はうつむいていた顔をあげた。




ゆっくりうなずいて、口を開く。




「今日、好きな子の誕生日だったの」

「うん」

「で、プレゼントあげたの」

「うん」

「告白したの」

「…」

「振られた…」




ぽつりぽつりと話す俺。




振られたことがショックというよりは、自分の何も考えていないようなところがショックで…。




「彼氏いるんだって。その人のことしか考えられないからごめんって」




好きだと思って目で追いかけたり、喋ったりしてたけど、結局俺は田中さんのことなんて何も見えてなかったみたい…。




杏光は、俺の頭をなでた。




優しくなで続けてくれる杏光…。




俺、子供じゃないのに…。




でも、不思議と安らぐ杏光の手。昔から、杏光は俺に寄り添ってくれる。




「ここで諦めるのも、諦めないのも、海琉の自由なんだよ?」

「諦めない…?彼氏いるのに?」
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