好きの海に溺れそう
海琉に電話しなきゃ!



あたしはスマホを持って部屋の隅に移動した。



消灯時間を過ぎてるから部屋から出られない。



「杏光何やってんの?」

「もうすぐダーリンの誕生日なんです♡」

「きゃああ!」



騒いでるみんなをほっておいて、海琉に電話をかけたらすぐに出た。



「海琉~、昨日ぶり!」

《杏光テンション高いね》

「やっぱり分かっちゃう?」



そこから海琉とずっと他愛もない会話。



あたしの電話に耳を澄ましていた女子たちもいつの間にか恋バナに戻ってた。



「あ、海琉、0時になったよ!誕生日おめでとう」

《えっ、ありがと…。やっと杏光と同い年だ。ていうか、もう30分も経ったの?早いね。》

「海琉と話すと時間あっという間!」



海琉と話してるだけで楽しいもん。



無償に海琉に大好きを伝えたくなった。



「海琉」

《ん?》

「すっごいすっごい好き。これからもずっと好き。世界で一番好き」



多分、こんなに強い確信を持てるのは、生まれてからずっと海琉と一緒にいたから。



海琉を生んでくれた雛子さんに感謝…。



あたしのうしろから「ひゅーう」というみんなの声が聞こえたけど無視!



いつの間にあたしの話聞いてたのよ!



そして面白いことに、電話の向こうからは何も聞こえない。



「…海琉、今、顔真っ赤でしょ」

《…》

「おーい」

《…正解》



ぼそっと海琉が言った。



かわいい!



電話越しに、海琉の今の状態が見えてくる。



「海琉明日バイトでしょ? 誕生日祝えたから早く寝なさい」

《うん…》

「じゃあね? おやすみ」

《おやすみ…》
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