好きの海に溺れそう
「お待たせ!」



海琉に駆け寄った。



あたしの声に気づいて海琉がこっちを向いて、少し照れたように笑った。



デートっぽい!



「誕生日おめでと!」

「へへっありがと。昨日も直接家まで来て祝ってくれたからさっき会ったばっかりって感じだね」

「おめでとうって何回でも言いたいよ」



なんでこんな嬉しいこと言ってくれるんだろ…。



「それにしても杏光とこんな風に待ち合わせるの、変な感じ」

「今日の海琉くんはひときわ輝いてるね?」

「なに言ってんの…」



へへっと笑って海琉の手を取った。



今日は電車に1、2時間乗って鎌倉に行くらしい。



ちょっと寒いかもしれないけど楽しみ~!



「行こっか」

「あっ、ちょっと待って?」



一度海琉の手を離してバッグを開けた。



「これ!巻いて~」



バッグから出したのは海琉にクリスマスにもらったマフラー。



自分じゃ巻けないので今日も巻いてもらいます。



「あっマフラー気になってたんだ。今日は一緒に出ないから巻けないなーって」

「よろしく!」



海琉にマフラーを渡す。海琉が前からあたしにマフラーを巻いてくれる。



ちゃんと自分でもできるようにならないといけないと分かりつつ、海琉に巻いてもらうのが大好きでなかなか自分でやろうとしない。



「海琉もあたしがあげたのしてきてくれてるね?」



海琉の首にもちゃんとあたしがあげたマフラーが巻かれてる。



「そんなん当たり前じゃん」



厚着をした海琉がしゃべりながら動きづらそうに後ろでマフラーを交差させた。



「できたよ」

「ありがと! では行きましょう!」



もう一度海琉の手を取って、駅の中に入った。



電車の中、2人で並んで席に座るとなんか変な感じ。



隣の海琉の膝に指で絵を描いて遊んだ。



くすぐったそうにしている海琉のことは気にしない。
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