好きの海に溺れそう
「顔赤いよ?」



あたしが意地悪で言ったら、海琉は「杏光も赤いよ」と言った。



やられた…。



「今日は本当にありがとね?」



あたしが言った。



海琉はうなずく。



「楽しかった?」



海琉があたしに聞く。



今度はあたしがうなずいた。



「杏光」

「なに?」

「大好き…」

「あたしも」



どちらからともなくキスをした。



人の目なんて気にならなくて、世界には私たちだけしかいない気がして、ただ海琉に触れたかった。



このまま夕日に吸い込まれていくんじゃないかな、海琉と一緒に。



そんな気分で2人でキスした。



夜が完全にやってきた。かなり寒くて海にいるのも限界…。



「ごはん食べる?」

「そうだね、そろそろお腹も空いてきたし」



立ち上がってまた海沿いを歩いた。



歩いていると、立ち並ぶラブホテルたち…。



ちょっとそんな気分かも…。



「海琉…」



一軒のホテルの前で立ち止まる。



「ん?」

「ここ…」



指でさして目でアピール。



海琉はなんて言うかな。



「えっ…はい…る?」

「はいろ…?」



海琉はこういうところ苦手そうだけど。



でも2人きりになれることなんてそんなにないでしょ?



今日は特別…。



海琉と一緒にホテルの中に入った。海琉と来るのってなんだか新鮮でちょっと恥ずかしい。
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