好きの海に溺れそう
玖麗の悠麗に対する感情は言わずもがなだけど、悠麗は玖麗のことどう思ってるんだろうか。



ホワイトデーにもお返しをもらったらしいし、前みたいな完全な脈無しではないとは思うんだけど…。



「玖麗、頭になんか付いてる」

「ん?ここ?」

「違う、ここ」



悠麗が玖麗の頭についてる糸くずを取ってあげてる。



いい雰囲気ではあるんだけどな…。



2人を後ろから眺めてたら、小太郎くんが帰ってきた。



「ただいま」

「あー小太郎くん、お帰りなさーい」



玖麗がソファから声をかける。



「おっ玖麗じゃねえか、久しぶりだな」



ズカズカ家に入った小太郎くんは洗面所で手を洗ってから冷蔵庫を開けて中身を物色してる。



「そういや玖麗、最近俺の会社に来た19くらいのカメラマンがこの前の旅行の写真見てお前のことタイプだから紹介しろって言ってたぞ」



小太郎くんがふと、冷蔵庫に入ってる麦茶をコップに入れて飲みながら言った。



「えっ、なに?」



玖麗が困惑してる。



「良い奴だから悪くねえと思うけど」

「うーん…。私はいいかな…」



まあそうだろうな。



玖麗はそういう紹介で人と会うのが苦手だ。



杏光とダイニングで座りながら2人の様子を見てたら、杏光が小声で俺に話しかけた。



「ちょっと待って、これ、悠麗の気持ちを確かめるチャンスじゃない…?」



あ、たしかに…。



悠麗の方を見てみると何でもなさそうな顔でゲームを続けてる。



「ちょっとカマかけてみるか…」



杏光が呟いて、玖麗に座りながら話しかけた。



「玖麗、会うだけ会ってみたら? 気乗りしなくても思いがけず気が合うかもしれないし」



そう言ったら、悠麗が反応した。



「玖麗はそういうの苦手だろ」



さっきと同じ何もない顔で言ってるけど反応したってことは興味がないわけじゃない…?



もしかしたらこれは観察が必要かもしれない …。
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