好きの海に溺れそう
~海琉~

中庭には人がいっぱいいて、俺たちはステージの前で芹田の出番まで他のバンドの演奏を見てた。



俺は時間がなくて執事服のままだ。



そこで、急に後ろからぎゅっと抱きつかれる感覚。



一瞬びっくりして振り向くと、杏光。



「ああ…やっと触れる…」

「学校内なんだけど…」

「文化祭だからいいよね?」



まあいっか…。



「魔法少女、着替えちゃったの?」

「似合わないんだもん」

「似合わないけど可愛かったのに」



本当に似合わないけど、俺にとっては可愛いからちょっと残念。



「そんなこと言われたらいくらでも着たくなっちゃうじゃん…」



杏光がそう言いながら、俺の手に自分の手を滑り込ませてナチュラルに手を繋いで隣に立った。



「あれ、玖麗ちゃん?」

「あ!実結ちゃん!」



ん?



玖麗に、可愛い感じの女の子が話しかけた。



あ、もしかして玖麗が最近学校で仲良くしてるっていう?



「海琉、芹田くんの彼女さんだって。玖麗と友達だったみたいだよ」

「ほんと!?」



彼女さんが俺達にぺこっと頭を下げた。



この子が芹田の…。



こんな偶然あるんだ。



「玖麗がいつもお世話になってます~。芹田くんも、実行委員が一緒でよくしてもらってて…」



杏光が挨拶した。



彼女さんは「ああ!」という顔をして、笑顔になる。



「櫂からよく聞いてます!杏光さんと海琉くん、ですよね?いつもラブラブで~って」

「あはは、お恥ずかしいです…」



確かに、ラブラブは否定できない…けど、彼女に言うほどラブラブなの出てるのか…。



まあそうだよね…。



芹田たちがステージに出てきた。
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