好きの海に溺れそう
ドラムに座る芹田。



マイクを持ったボーカルぽい人がなにか喋ってる。



そして始まった演奏。



今はやりのバンドの曲!



ドラム、かっこいいじゃん…。



彼女さんが、すごく嬉しそうに動画で芹田を撮ってる。



俺たちもすごく楽しくて、その場の雰囲気に乗っていた。



3曲ほどやって終わった芹田たちのバンド。



上手い下手とかあんまりわからないけど、かっこよかった。



ステージから降りた芹田が、こっちに来た。



彼女さんと仲良く喋ってて、お似合いな雰囲気だ。



芹田がこっちに気づいて杏光に挨拶した。



「お疲れ~。かっこよかったよ」

「ありがとうございます!」



文化祭って楽しいな。



でも、もうそろそろ終わりの時間だ…。



杏光にとっては、高校生活最後の文化祭。



すごく楽しそうにしてたから、それだけで俺は嬉しいな。



「じゃあ、あたし達帰るね?」



悠麗と玖麗が校門に向かって歩き出した。



あっそういえば、あれが…。



「ちょっと待って!」

「ん?」



2人が不思議そうに立ち止まって振り返った。



「海琉、ほら、あれ持ってる?」

「あ、うん」



まだ2人にペアチケットを渡してない。



「これ、良ければ玖麗と悠麗、もらってくれないかな?昨日のお礼に…」



そう言ってカバンから昨日もらったチケットを取り出した。



悠麗と玖麗が「えっ」という顔をする。



そして、難しい顔でチケットを見つめてる。



2人とも動きがそっくりだよ…。



「あたし達、ここ前に行ったの。だから当分いいかなって」

「これ期限決まってるから、俺たちがこの期間内にもう一回行くより、お礼として2人にもらってほしいな」



俺と杏光が2人を見つめた。
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