好きの海に溺れそう
一応あたしもカメラマンの娘だから、写真には小さい頃から割と興味はあった。
にしてもこのアマチュアの人たちが撮ったっていう写真、なにか私の関心を引く…。
「なんでこの写真見てんの?」
「んー、プロ目指してるやつらに、好きなもん撮ってこいって言ってこれ集めたんだけど、なんかこう、それぞれ個性はあるけど広く世に出せないっつーか…平たく言えば、大衆受けしねえんだよな~」
そう言われて改めて写真を見たら、たしかに、個性は見えるけど写真集で出るような写真みたいな魅力の出方はしてない。
でも、それも味わいの一つじゃない…?
こういうのが好きな人もいると思う。あたしが気になってるように。
「気になる?」
海琉があたしの髪をいじりながら聞く。
「んー、ちょっとね~」
そこで、急に小太郎が振り向いた。
「そういえば杏光、お前進路どうすんの?」
「ん? 就職するけど」
「なんかやりたいこととかあんの?」
あたしは…特にない。
将来のことなんて全然わからなくて、毎日毎日今を一生懸命生きてた。
大学で勉強するよりは、働く方に興味があるから就職の道を選んだけど…。
どんなことして働きたいとかも、実はあたしには全くない。
「なんで?」
「いや…俺の会社、社員ちょっと増やそうと思ってんだよ。だからどうかと思って聞いてみた」