好きの海に溺れそう
~海琉~

杏光が、進路を決めた。



小太郎くんの会社に入って、アマチュアの写真家たちをプロとして羽ばたかせたいって。



小太郎くんは嬉しそうだった。



杏光がやりたいことを見つけたって晴れたような顔で言っていたのを見て、俺も嬉しくなった。



杏光は、前に小太郎くんが広げていたアマチュアの人たちが撮った写真を、今すぐ、個展にして開きたいって言ったらしい。



多くの人の目に留まらせる機会を与えるような写真展をって。



さすがに今すぐと言って明日にでもできるようなことじゃないけど、小太郎くんは嬉しそうに杏光にやってみろって言ってた。



俺も全面的にバックアップするから、杏光がプランナーとして中心でやってみろって…。



自分の会社のことなのに、素人の杏光に中心でと言える小太郎くんは、器が広い…。



研修費ってことで、バイト代程度だけど、お金も少し会社から杏光に支払われるらしい。



でもそれよりも、やりたいことをはっきりと見つけた杏光は輝いてた。



その成長の瞬間を、こんなに近くで見ることができたことが、俺にとっては何よりも嬉しいことだな。



俺も、今できることを頑張ろう。



そんな俺は今、悠麗の部屋に来てる。



写真展を開くと決めてからの杏光は忙しそうで、今日も小太郎くんと打ち合わせだって言ってた。



会社の方でカメラマンの人たちと会うらしい。



暇な俺は、1人で悠麗の部屋に来た。
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