好きの海に溺れそう
「それから、生まれたときからずっと一緒の幼なじみの先輩として言うね」



俺は悠麗に優しく言った。



「俺、杏光のことが本当に好き。死ぬほど好き。あり得ないと思ってた人を好きになった分、この気持ちが普通よりもずっと特別なものなんだと思ってる。それは悠麗と同じじゃないかな」

「…」

「そんな特別な恋をして、もしあの時幼なじみを続ける選択をしてたら、今頃多分俺は物凄く苦しんでたと思う。杏光に触れたくて、好きだって言いたくて、どうしようもなく苦しかったと思う。それは杏光もきっと同じ」



もちろん、恋愛感情なんて人それぞれで、悠麗も絶対にそうだなんて確証はないけど。



でも、恋愛対象じゃなかったあり得ない相手が自分の内側に入ってくるのはそれくらい強いことだと、俺は思ってる。



「あとは、たくさん考えて悠麗が決めることだよ。どっちの選択をしても、みんな受け入れると思う」



悠麗は、静かに聞いてゆっくりうなずいてた。



悠麗はしばらく黙りながら寝そべって考え事をしてから起き上がった。



「…色々ありがと。ちょっと頭切り替えてみるわ。ゲームでもする?」

「する~」



みんな俺の大切な幼なじみだから、みんなの気持ちを受け入れたいな…。



なんかこんな話ししてたら杏光と喋りたくなったな。



もう打ち合わせは終わったんだろうか。



そんなこと考えながら悠麗とリビングに出た。



あれ?



ちょうど同じタイミングで家のドアが開く。



杏光帰ってきた!?



でも、なんだかガヤガヤと騒がしい。
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