好きの海に溺れそう
そう言って先生はいなくなった。



まじで~…?



あたしに挨拶してくれるクラスメートたちに笑顔を返しつつ、海琉のそばに寄った。



「聞いてた?」

「聞いてたよ~…」

「ごめん…」

「いやいや海琉悪くないでしょ。悪いのは成績だけ」

「…」



それは本当じゃん…。



「もうしょうがないから今日のうちに補習終わらせちゃお?」

「いいの…? 映画は…?」

「終わったら行けばいいよ」

「ほんとごめん…」



四六時中一緒にいるので大丈夫です!



というわけで、誰もいなくなった教室で、海琉の膝の上に乗りながら岡野先生を待った。



岡野先生は、去年あたしのクラスの数学の担当だった30代なかばの男の先生。



悪い先生じゃないけど、生徒からはあんまり好かれてない。



教室に入ってきた先生は、あたしを見てぎょっとした。



「なんで暮名さんがここに…?」

「だって本当は今日海琉と映画見に行く約束してたんだもん」



あたしがそう言ったら、先生はため息をついた。



「話はわかったけど、せめて席に座りなさい」

「え~?」



ここが落ち着くんだけど…。



だめ…?
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