好きの海に溺れそう
「ああ、カメラマンの人だっけ? …その人がなに?」



白々しい…。



「玖麗のことデートに誘ったらしいよ」

「…へー」



あたしが言ってから答えるまでの間、約3秒。



なかなかいい間じゃない?



「でも玖麗行かねえだろ? よく知らない人とそういうの苦手じゃん」



悠麗の目線はテレビに行ったままだけど、動揺してるのは伝わってくる。



「最近ずっと連絡取り合ってたみたいで、割と仲良いらしいから行くかも」

「…」

「玖麗にも新しい世界が必要なのかもね」



あたしが言った瞬間、悠麗がガバッと立ち上がった。



「…ちょっと出てくる」



タオルをその場に置いて、悠麗はリビングを出てった。



悠麗…。



これはもしや…。



外雨降ってるのに、湯冷めして風邪引くよ…。



あたしの言葉が、玖麗の存在が、悠麗から冷静な判断をなくさせた。



これはかなり期待値が高いよね!?



悠麗、頑張れ…。



結局その日は悠麗は帰ってこなかった。



どうなったのか気になる…。



玖麗にも聞いていいのかわからないし…。



でも、その不安は次の日の朝、一瞬にして吹き飛んだ。



「ただいま」



リビングで3人で朝ご飯を食べていたら、帰ってきた悠麗。
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