好きの海に溺れそう
聞いてないよ!?



でも、みんな期待の目であたしを見てる…。



仕方なく、あたしも前に出た。



「ご紹介に預かりました、暮名です。まず、私の企画に対して賛同し、惜しみない協力をしてくださった社長と北田さん、そしてスタッフとカメラマンの皆様に感謝します」



そう言ってゆっくりお辞儀した。



皆が拍手してくれる。



あたしは顔を上げて続けた。



「社長である父が、所属のアマチュアカメラマンの方の写真を見ていたところを偶然見て以来、その写真たちが私の心を捉えて離しませんでした。

SNSの普及によって機会が増えたものの、アマチュアの方は、写真を見ていただける機会があまり多くありません。

プロになる手前の方が撮った、アマチュアならではの写真を、もっと世の中の人に見ていただきたいと思い、この企画を父に相談しました。

そこから準備を重ね、今日こうして本番を迎えることができ安堵しています。

本日はどうぞよろしくお願いいたします」



あたしの挨拶に、みんながもう一度拍手をくれる。



今とても、清々しい気持ち。



こうして、開場の時間になり、写真展が開幕した。



あらかじめ招待していた小太郎の知り合いや同業者だけじゃなく、通りかかった人や告知を見て来てくれる人もたくさんいて。



すごく緊張する…。



一人一人に来場のお礼を言った。



「杏光」



1時間くらいして、愛しい人の声がした。


声の方向を見ると、海琉と悠麗と玖麗。



一気に緊張がほぐれるのを感じる。
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