好きの海に溺れそう
「どんな感じ?」

「うん、お客さんの反応もいいし、商品もそこそこ売れてるよ」

「頑張ってるね」



優しい海琉の口調と声。



海琉に触りたいのを抑え、みんなを案内した。



1枚1枚丁寧に見てくれる。



「あ、これ撮ったの小太郎くんなんだ」



『春』と『夏』の間で玖麗が足を止めた。



おととし小太郎がソウルに行った時に撮った写真。



有名なドラマのロケ地にもなったという、岬のように海に向かって伸びてる道の真ん中に、ピンクのスカビオサが一輪咲いた鉢植えが置いてある。



空も海も青々としているのとは対照的に、スカビオサは花が半分散ってしまっている。



タイトルは『まだ春でいたい』。



「この世界観…好きだなあ」



玖麗がしみじみと言った。



実はあたしもこの写真の世界観は気に入ってる。



この世界観を、写真の技術でうまく引き出してるのもさすがだなって思う。



小太郎もあんなんだけど、腕は確かだよね…。



ゆっくり1枚1枚見てもらってから、ようやくアマチュアさん達の『愛』ブースに来た。



「おわっ、海琉がいる」



悠麗があたしが撮った写真に気がついて驚いた声を出した。



「タイトル、『私だけが知ってる顔』って…俺まで恥ずかしいわ」



海琉の方を見たら、海琉も赤面。



かわいい~。
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