好きの海に溺れそう
ちょっと膨れた俺に、杏光は「ごめんごめん」と笑いながら俺の顔を両手で包んだ。



「モテる女はつらいね~。いやまさかあいつに好かれてるとは思わなかったけど」

「知らない!」

「拗ねてて可愛いね~? ほら、写真撮ろ」



杏光がそう言って強引に俺を引き寄せて自撮りした。



胸に桜の飾りをつけてて卒業生そのものの杏光。



やっぱり寂しい。



そこに、杏香さんと小太郎くんが来た。



「杏光、卒業おめでと」

「ありがとー」



ニコニコしてる京香さん。



それに対して小太郎くんも相変わらずだ。



「お前の合唱なかなか良かったぞ」

「はあー? どれがあたしの声とか分かるわけないでしょ」

「俺には分かんだよ」



なんだかんだ仲の良い親子だ。



3人で並んだ写真を撮ってあげたら、小太郎くんが瞳を潤ませ始めた。



「ちょ、何泣いてんの…」

「まじお前…でっかくなったな…」

「恥ずかしいからやめてよ…」



小太郎くん、なんかちょっと可愛い…。



「あ、おばさんおじさん! お久しぶりですー!」

「あっ日夏ちゃん! 久しぶりー! 卒業おめでとう」



日夏先輩とその両親も来たから、今度は6人分で撮ってあげた。



今日の俺はカメラマンに徹しよう。



と思ってたら、神城さんに掴まった…。
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