好きの海に溺れそう
杏光の顔はちょっと泣きそうになってて。



「学校っていいね…。卒業寂しいよ…」



そう言う杏光の頭を右手でふわっと撫でてから頬に触れた。



途端に堰を切るように泣き出す杏光。



そういえば、中学のときの卒業式もこうだったな…。



目の前で涙をあふれ出して泣く杏光を、そっと包み込んだ。



後ろ頭を撫でながら、優しく抱きしめる。



杏光とおでこをくっつけてふっと笑い合った。



そのとき聞こえたシャッター音。



えっ、なに…?



顔を上げたら、日夏先輩がニヤニヤしながらスマホで俺たちのことを撮ってた。



恥ずかしいけど…最後だからまあいっか…。



「2人の写真撮ってあげるよー」という日夏先輩の言葉に甘えて、何枚か撮ってもらった。



隣ではしゃいでる杏光がかわいい。



もうどうにでもなれ!



杏光の頬にチューした。



「えっ? 今何したの!?」

「知らなーい」

「海琉~~!大好き!」



杏光が横から俺に思い切り抱きついた。



倒れそうになる。



「もうお腹いっぱーい…」



日夏先輩がうんざりって感じで言いながら、またシャッターを押した。
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