好きの海に溺れそう
時間も経って、校舎も人がまばらになってきた。



時間も経って、校舎も人がまばらになってきた。



日夏先輩は彼氏が迎えに来ると言ってさっき帰った。



「あたし達もそろそろ帰ろっか…」

「そうだね」



俺たちが一緒に二年間過ごした校舎。



俺は明日からもまた通うけど、杏光は今日で最後だ…。



杏光は校舎にゆっくりとお辞儀をした。



帰るために下駄箱に向かう。



靴を履き替えて杏光の学年の下駄箱に行ったら、杏光が封筒を拾ってた。



4通くらいある…。



「どうしたの?」

「なんかあたしの下駄箱に入ってた…。ラブレターっぽい」



さすが…。



俺の彼女、モテます。



杏光は手紙を丁寧にカバンに閉まってから、上履きを袋に入れてそれもカバンにしまった。



「上履きもこれで最後か~…」



寂しそうに言う杏光に、手を出して握った。



「帰ろ」

「ん」



杏光と、最後の下校。



しんと冷えた冬の空の下、切ない匂いがした。
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