好きの海に溺れそう
社会人と高校生
~海琉~

このところ、杏光は忙しそうだ。



毎週金曜日に家で待ってるけど、前は定時で帰ってこられていたのが、今はほとんど残業して帰ってくる。



先週は家に着いたのが21時過ぎ。



家に入るやいなや、疲れた顔をした杏光は俺に抱きついて、そのままお風呂直行だった。



仕事が大変みたい…。



一方の俺は高校生、まだ学生で。



社会人との差を日々思い知らされてる。



専門学校に進学することにした俺は、少なくとも高校を合わせてあと3年は学生のままだ。



俺と杏光の差が、どんどん開くんじゃないかってそんな不安が最近はよぎってしまう。



昔からずっと一緒で、杏光との距離なんて感じたことなかったけど、今は物理的な距離も、社会の立場的な距離もあるから…。



せめて一緒に住みたいって思ってる。



思ってるけど、杏光が自立するためにと始めたことに、俺が水を差したくない。



でも、この不安な気持ちはどうしたらいいんだろう…。



今日は文化祭。



俺のクラスは今年はポテトを売る。



なぜか猫のカチューシャをつけて…。



悠麗と玖麗は今年は受験だから来られないけど、杏光が日夏先輩と来るって言ってた。



俺のシフトが終わったタイミングで、ちょうど杏光から『着いたよー』と連絡が来た。



迎えに行こ~。



「新太、俺あがるね」



今年も同じクラスの新太に声をかけた。
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