好きの海に溺れそう
制服じゃなくて、来校者としてっていうのが寂しくもある。



「海琉その顔どうしたの?」

「ん!?」

「鼻とヒゲついてる…」



あ、顔にマーカーで描かれたの忘れてた…。



「ほら俺のクラス、動物がコンセプトだから…」

「誰が描いたの?女の子?」



杏光が引きつり笑いしながら聞いた。



俺は慌てて顔を思い切り横に振った。



「描いたの俺っす!」



新太が手を挙げてすぐに割り込んでくれる。



「なーんだ新太くんか」



途端にほっとした顔になる杏光。



前は、そんなことではここまで露骨な顔しなかったよね…。



杏光も不安になってる…?



どうしたらいいかわからず、とにかく杏光と日夏先輩を案内するために歩き出した。



杏光が俺の横に立って手を握った。



握った手の力が心なしか少し強い。



普段なら学校でこんな手つないだりしないけど、俺も杏光の不安を少しでも取り除きたいと、強く握り返した。



1日文化祭をまわって、一般来客は帰る時間になった。



このあとは後夜祭。



出るつもりはなかったけど、新太にどうしても後夜祭に一緒に出てくれと頼まれて仕方なく出る。



俺にとっても、最後の文化祭だもんね…。
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