好きの海に溺れそう
~杏光~

新聞の取材の話は驚いた。



あたしの仕事が認められた気がしてすごく嬉しかったのは事実。



でも…。



あの話を聞いたときの海琉の顔が頭に浮かぶ。



あんな不安そうな顔、初めて見た…。



あたしが、海琉を不安にさせてる…。



それに、あたしも…。



文化祭に行ったとき、海琉が一年生の女の子と写真撮ってるのを見て動揺してしまった。



今までのあたしなら嫉妬はしても動揺はしない。



だけど、あたしが全く知らない一年生の子が海琉に近づいているのを見て、なんだか全く別の世界にいるような気がしてしまった。



特にそれを感じたのが、あたし達が「来校者」って枠だったこと。



一般来客は帰る時間が海琉と同じじゃない。



後夜祭にも参加できない。



なんだか、部外者って言われてるみたいで、高校生との距離を感じてしまった。



それが物凄く寂しくて…。



だから、あの日は真っ直ぐ帰らずに海琉の家まで寄ってしまったんだ。



そろそろ、お互いに心が限界に近づいているのを感じる。



一週間に1回は会ってるのに、それでもこんなにきついなんて思わなかった。



相当海琉に依存してるな…。



限界を迎える前に、手を打たないといけない。



心に感じている色んな事を整理しなきゃ…。



そして金曜日の今日。



比較的早めに仕事を終えることができて、退勤。
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