好きの海に溺れそう
「あ、瀬野くん久しぶり」

「久しぶり~。今帰り?」

「うん。そう、紹介したかったんだけど、彼氏の海琉! この間から一緒に住み始めたの」



杏光が紹介してくれた。



隣の女子大生は興味なさそうにスマホを見てる。



「同棲!? うわ~、すげえな社会人。どうも、瀬野です」

「霜月です」



俺はそう言ってお辞儀。



「制服着てる。高校生?」

「はい、高3です」

「じゃあ一つ違いか~。全然気楽に接してよ、よろしくね」



いい人っぽい…。



前回は俺も精神状態がかなりギリギリで余裕がなかったけど、こうして話すといい人なのが伝わってくる。



エレベーターから降りて、「じゃあ」とそれぞれの部屋に入った。



「瀬野さん、いい人そうだね」

「ね。見るたび違う女の子家に上げてるけどね」



じゃああれは彼女じゃなかったのか…。



それから朝炊いておいたご飯を温めて食べて、いつも通り一緒にお風呂に入って寝た。



そろそろ夏に入ってきて、この狭いベッドで一緒に寝るのも暑くなってきた…。



薄い羽毛布団から体のほとんどの部分をはみ出して、くっつくように眠った。



こんな風に杏光と生活をして四季をこれからずっと感じていけるんだと思うと幸せだ。



それから日が流れて土曜日の朝。



「おはよ~…」

「海琉おはよ」
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