好きの海に溺れそう
家を出ると、瀬野くんの家から背の高い女の子が出てきた。



最近はいつもこの子ばかり見る。



その子のあとに瀬野くんが顔だけ出して出てきて、「じゃーね-」と言ってその子に手を振った。



海琉と顔を見合わせる。



その子が行ってから、瀬野くんに挨拶した。



「デート?」

「ん。それより最近ずっと同じ子だね、好きなの?」



あたしがそう言ったら瀬野くんは肩をすくめた。



「逆に暮名はなんでそんな気になるんだよー。俺のこと好きなの?」



瀬野くんが軽口でそう言ったら、海琉が瀬野くんを睨んだ。



「あー、悪い悪い海琉。冗談」

「その冗談つまんないよ!」



海琉と瀬野くんはもうすっかり仲良しで、「瀬野くん」「海琉」と呼び合ってお互いため口だ。



「でもやっぱ…」



瀬野くんが口を開いた。



「ん?」

「好きなんだよなー…俺、あいつのこと」



おお…。



そんなことをさらっと…。



「付き合ってるわけじゃないんだ」

「体の関係止まり」

「脈は?」

「ねえなー…」
< 328 / 350 >

この作品をシェア

pagetop