好きの海に溺れそう
それは切ないね…。



最近よく見るから、あたしにとってもあの子は一方的に親近感を感じてる。



なんとかうまくいかないものか…。



「今からあたし達水族館行くんだけど、あの子も誘って一緒に行く?」

「ちょ、杏光?」



海琉が「え?」という顔で見てくる。



海琉も動揺させられるしちょうどいいや。



「そんなこと言って急に行けるわけないよね?」



海琉が焦ってる。



来るなというオーラが出てて、性格悪いけどあたしは嬉しい。



瀬野くんはそれに気づいてないみたい。



「ちょっと…聞いてきていい?」

「待ってるよ」



瀬野くんがエレベーターの方に走った。



「ねえ杏光…。俺、2人で出かけたいんだけど…」

「まあまあ。あたし達いつも一緒にいるんだから、隣人の恋に一役買おうよ」

「それはそうだけど…」



しばらくして、2人で戻ってきた。



「俺らもお邪魔させてもらいます!」



瀬野くんがそう言った。



女の子の方も笑顔でぺこっとお辞儀。



「よろしくお願いします~」

「お願いします…」



ニコニコしながら言うあたしとは対照的に、海琉は小さい声でそう言った。



かわいそうだから海琉の手を握った。



このくらいはね?
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