好きの海に溺れそう
…。



杏光には勝てない…。



終わってから首筋にキスを一つ落とした。



「へへ」



杏光がへらっと笑う。



髪の毛を撫でて乱れた杏光の前髪を整えた。



「最近バイトの子どう?」



杏光が上目遣い気味に俺を見て言う。



「うーん? 相変わらず特に何もないよ」



働いてるレストランで、最近大学生のバイト子が入った。



キャピキャピした子で、そういうつもりはないのかもしれないけど何かにつけて距離が近い。



この前杏光が食べに来たときにその子を見てから、杏光はあんまり気に入らないらしい。



「もう結婚しようよ」



杏光が言った。



これを言うのはお互い100回目くらい。



早く結婚したかったけど、俺も仕事が落ち着かなかったし、杏光の方も大学がある。



籍を入れるだけならいつでもいいとも思ったんだけど、区切りみたいなものがやっぱり欲しくて。



でもこのまま順調に行けば、杏光は今年度中に単位を取りきって卒業できる。



杏光の頬を撫でて言う。



「結婚しよっか?」



杏光が嬉しそうに俺にすり寄るように体を寄せた。



「明日にでも籍入れちゃいたいくらい」

「それはちょっと…」

「じゃあいつ入れるの~!」
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