好きの海に溺れそう
慌てて俺も立ち上がる。

「うちの杏光がご迷惑おかけしてすみませんでした…」

「いえ、こちらこそ彼氏さんに来てもらっちゃってすみません」



軽く会釈してからフラフラと歩き出す杏光を支えてお店を出た。



杏光が俺の腕に両腕でしがみついてくる。



「普段そんなに酔っ払わないのにどうしたの…?」

「だって~。海琉がいつ結婚してくれるかわかんないんだもーん」



それが理由だったの?



俺だって早く結婚したかったけど、杏光のタイミング的にまだかなって思ってたよ。



「杏み…」

「海琉さん!」



ん!?



口を開きかけたら、突然向こうの方から声をかけられた。



誰?



と思って声の方をよく見てみたら、バイトのアンリちゃん。



居酒屋から、男女数人の大学生ぽい人と一緒に出てきた。



「誰?」



一緒にいる人がアンリちゃんに聞く。



「バイト先の料理人さん!」



そう言ってアンリちゃんがこっちに近寄った。



杏光を見てぺこっと頭を下げる。



「こんばんは~。偶然ですね~!」



いつもバイトの姿しか見てないけど、こうして見るとめちゃくちゃ大学生っぽい。



若いな…。



アンリちゃんの後ろから何人かついてきた。
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