好きの海に溺れそう
「よぼよぼになった先もずっとあたしのこと愛してるだろうけど、どーせ、よぼよぼになってもまだ結婚してくれないんだ…」



車に乗ってからも、助手席で杏光がまだ何かぶつぶつ言ってる。



俺は、赤信号で止まりながら、片手で杏光の頬をちょっとつねった。



「なに?」

「杏光、超かわいい」

「知ってます~」

「来月、俺たちが付き合った日」



そう言いながら、青信号になって、アクセルを踏む。



「その日に、籍、入れようか?」



運転しながらそう言った。



前を向いていて、杏光の表情が分からない。



でも、こっちをまっすぐ見る視線を感じる。



「ほん…き?」

「当たり前じゃん」



返事がないから、ちらっと杏光の方を見た。



どんな表情か知りたくて…。



助手席の杏光は、めちゃくちゃ泣いてた。



そんな杏光が愛おしくて、片手で涙をぬぐった。



「海琉…好きだよ…」

「知ってるよ」

「抱きしめたい…」

「運転中なのでダメです~」



生まれてから24年間ずっと一緒だった杏光。



どんなときも一緒にいたし、色んな表情も見てきた。



色々なことを2人で経験して、色々な関係になって。



どの瞬間も愛おしかった。



これからも、そんな瞬間を2人でたくさん作っていきたい。



死ぬまでずっと。



一生愛させてね、杏光。
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