好きの海に溺れそう
「うん…そうみたい…さっき言われた」



悠麗は無言で、また缶の底を叩き始めた。



俺は立ち上がってブランコを漕ぐ。



悠麗は食べるのを諦めたのか、缶を袋の中にしまった。



黙って真っ直ぐ見ている。



「幼なじみは終わりって言われて…。でも俺、杏光とは今の関係が本当に大事だから…」

「そりゃそうだよな…急にそんなこと言われても、海琉は心の準備もなにもないわけだし」



うん…。



俺、どうしたらいいんだろう…。


正直、受け入れきれない。



「でも、海琉」



悠麗が立ってブランコをゆっくり漕いでる俺の方を見た。



「杏光も、お前が受け入れられないの、見抜いた上で言ったと思う」

「…」

「その上で、幼なじみは終わりって宣言して、なんていうか…覚悟を持って、言ったんじゃねえ?」



覚悟…。



「まあ、海琉からしたら、そんな杏光の勝手に振り回されて…って思うかもしれないけど」

「うん…」

「海琉が杏光の気持ちを受け止められないにしても、海琉も同じように、杏光に対して向き合うのが…誠実さだと思う」



悠麗に言われて、少しはっとした。



その通りかもしれない…。



「悠麗…ありがとね」

「おう。まあ…頑張れよ」
< 47 / 350 >

この作品をシェア

pagetop