好きの海に溺れそう
それから、何日も何日も杏光に言われたこと、悠麗に言われたことを考えた。



杏光に急に言われて驚いて、不安で、怖くて、自分のことばかり考えていたけど。



杏光も同じように、この関係が崩れることを覚悟した上で言ったんだ…。



だとしたら、俺も、きちんと杏光に向き合わないといけない…。



たとえ、それが苦しいことだとしても。



杏光が苦しんだ結果、俺に言う決意をしてくれたのなら、その意味についてきちんと考えないと…。



正直、杏光が勝手に決めた意志で、急に前触れもなく言い出したことに多少の腹立たしさはある。



だけど、それ以上に杏光は俺にとって大事な存在。



だから、その大事な存在の杏光のことを、俺はきちんと受け入れて考えないといけないよね。



だから、俺は…苦しいけど。すごく苦しいけど。



杏光の『幼なじみ』をやめる。



もう、今までみたいに接しないし、軽々しく向こうの家にも行かない。



杏光は…杏光は、ただの。



ただの、隣人。



これからは、もう、幼なじみは終わりだ。



でもやっぱり、そう思っても杏光にどんな顔をしたらいいかわからなくて、杏光のことを俺は意図的に避けていた。



家を出ようとしたとき、隣の家からも外出する声が聞こえたときは、あえて時間をずらしたり。



家の近くで杏光を見かけたら、近所のコンビニで少し時間を潰したり…。



今までみたいに、杏光と普通に喋って笑いたい。



苦しいよ…。



毎日、本当に毎日、杏光のことばかりを考えていた。
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