好きの海に溺れそう
「ちょ! ちょ!」

「なに?」



もういいよ日夏…。



そんなに歩に意地悪するならあたしから教えちゃうよ!?



あたしが日夏に言いかけたとき、先に口を開いた日夏。



「はあ…。じゃ、ここまで追いかけてきたご褒美として教えてあげるよ」

「マジ!?」



マジ!?



よかったね歩…。



それから本当に二人は連絡先を交換してた。



「むやみやたらと用もないのにメールしてこないでよ?」

「するし!」



あたしはそんな二人のやりとりを笑いながら見てた。



って…。



「あああああ!」

「なに!?」



男子200m始まっちゃうじゃん!?



歩のせいで良い席取るの忘れてた!



歩をほっといてグラウンドの中心にいったら、もう前列は埋まってた。



歩の馬鹿野郎…。



でも、もともと背の高いあたしと日夏は後ろからでもまあ見える。



人の応援の声が聞こえる。



「位置について」



スターターの人がピストルを真上にあげた。



ドン、という音と共に全員一切に走り出す。



海琉は細い体でよく走る。



ほんとに海琉だけ光ってるように見えて、気づけば海琉しか視界に入ってなかった。



やばい…心臓の音が止まらない…。



海琉はそのまま一位でゴール。



「きゃあああ!」



あたしがその場で叫んだら、周りにいる人が変なものでも見るようにこっちを見てきた。



あたしは日夏から殴られる。



そのままそこから抜けて、海琉のとこに走った。



「海琉―!」



海琉があたしに気づいてにっこりと笑う。



「見てた? 一位!」
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