好きの海に溺れそう
“好き”が抑えきれないからべたべたして発散してるだけ。



そこに照れなんて一切ない。



あたしがたまたまそういう性格してるだけだけど…。



「よっし! じゃ、午後も頑張ろう」



海琉が立ち上がって言った。



あたしも立ち上がる。



いつの間にかお昼の時間になっていた。



「杏光借り物競走だっけ?」

「うん。“物”じゃなくて“人”だけどね」

「でもその前に応援だね」

「あっ、そうだった」



るみちゃんとペアじゃん…。



純粋そうだから逆にきついっていうか…。



急いでご飯を食べてから、まずはあたし達のカラー。



広い校庭の配置どおりの位置に立つ。



「あんたもう少しそっち」

「はいはい」

「彼女きてんの?」

「うん。暮名も彼氏見てんだろ?」



こそこそ話してるのはあたしのペアダンの相手。



あたしもこの人の彼女の嫉妬の対象かな。



まああたしは全く眼中にないんだけどさ…。



そういう問題じゃないよね。



そのあとの発表はもう最高に楽しかった。



あと一年しかないとか超さみしい…。



終わったら次は海琉たちのカラー。



日夏と見やすい場所に移動する。



「あたし海琉のペアダン見たくないんだけど」

「見なきゃいいじゃん」



そんなこと言っても見たいじゃん…。



複雑な乙女心ってやつだ。



音楽がかかって海琉たちの発表がはじまった。



海琉かわいい…。



「ねえ杏光、さっそくあいつから電話かかってきたんだけど」

「あいつって?」



あたしは日夏を見ずに聞き返す。
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